チャプター 72

ジェームズはヘンリーのあとに続いてエレベーターへ乗り込むと、頭の中が目まぐるしく回り始めた。最高経営責任者の顎は砕けそうなほど固く食いしばられ、その視線はデジタルの階数表示に鋭く据えられている。

「社長」ジェームズは慎重に切り出した。「先に連絡を入れておいたほうが――」

「いやだ」

ヘンリーの声は、ガラスを切り裂きそうなほど鋭かった。

そのあとに落ちた沈黙は、息が詰まるほど重かった。ジェームズがこんなにも取り乱した上司を見るのは何年ぶりだろう。イザベラが去って以来のことだった。誕生日のお祝いで、ヘンリーとソフィアのあいだの空気も少しは和らぎ、もしかしたら仲直りへの道筋くらいは見えたので...

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